日本福祉大学に通いながら社会福祉法人「AJU」さんが行う複数の活動を車椅子ユーザーとして第一線で啓発活動等を行う近藤佑次さんにお話を伺ってきました!
近藤さんの活動の原点はー
約九年前、当時真剣にやっていたスノーボードの練習中に怪我をして頸椎を損傷、その後すぐに車いすでの生活が始まりました。翌年には退院し、ヘルパーを利用した自宅生活をスタート。それがキッカケでAJU自立の家のことを知り、様々な活動に参加するようになりました。そして、2013年には現在の緑区で一人暮らしをスタートさせました。車いすで一人暮らしというのは驚かれることもあるのですが、現在もヘルパーさんにサポートしてもらいながら生活、通学、また様々な活動に参加する事ができています。
2014年に「障害者差別禁止法」を学びにアメリカへ渡り、現地の障がい者に対する法の整備と社会の寛容には大変驚かされました。このように外へたくさん出向く事ができたこと、それにはもちろん、車いすであるが故の不便なこともありますが、自身の世界や視野はとても広くなりました。私にとって【アジア障害者支援プロジェクト】の活動も、それらの活動の延長線上です。AJUでアフガニスタン支援として十七年前にスタートし、アフガニスタンやタイをはじめ、アジア十八ヵ国に約三千以上の車いすをアジアの障がい者たちに届けてきました。私は五年前に初めてタイへ渡り、その後、年に一度現地での活動に参加していましたが、プロジェクトの代表を務めていた小倉が引退する事が決まり、このままにしてはいけないのでは無いか…という想いから、昨年より事務局長という形で、より深い関わりを考えて活動に参加しています。
しかし、小倉が築いてきた道を後継していくのは中々大変な事だと感じています。タイでは、障がいを持つ現地のタイ人を雇い事務局を運営しています。小倉が築いてきた信頼関係や、車いすを運ぶルート作りなど、今後後継していくには課題が山積みです。しかし、現地スタッフの事、実際に車いすを譲渡した先の人達の顔を思い浮かべると、簡単に途絶えていいものでは無いような気がして…自分にどこまでの事が出来るかはまだ未知ですが、変化しながらも新しい代を築いて行きたいと思っています。
発展途上国における福祉支援の課題とはー
食べる事に困っている人が多い中、いくら身体不自由を抱えていても車いすを持つ事に抵抗がある人も多いです。今の日本の感覚では想像し難い事ですが、車いすを持っている=お金がある、と思われてしまい物乞いができなくなるから、という理由もあったり、また譲渡した車いすを売られてしまった、なんて過去もありました。日本では当たり前になってきた車いすですが、発展途上国ではまだ
” 特別なもの“なんです。道路整備がされていない村などでは外では使う事ができない場合もありますが、せめて家の中だけでも使用することが出来るだけで、その家族の暮らしは違ってきます。
ライフスタイルに合わせ、体格に合わせ、という日本のような福祉制度と比べてしまうと手が届かない事もありますが、それでも「出来なかったことが出来た」という、そんな当たり前の喜びや充実を一人でも多くの方に知っていただけたら、この活動の意味はそれだけで大きなものになると思っています。
近藤さんにとっての私たちに出来ることとはー
現在、大学に通い実習先で高齢者支援を学んでいます。今まで障がい者支援での当事者としての声を上げる活動が多かったのですが、高齢者支援を知っていくうちに面白さと充実も感じています。親の介護とか考える歳になったからですかね。
また、自身が暮らす名古屋市緑区での地域の活動にも興味深く参加し始めています。これからも自分に出来る精一杯で様々な活動を行っていきたいです。
近藤佑次さん ―Yuji Kondo―
日本福祉大学4年 アジア障害者支援プロジェクト事務局長
取材後記
取材後記障がい当事者として、自身も車いすを使いながらも様々な福祉活動をされている近藤さん。24歳の頃に不慮の事故により車いす生活になられたそうですが、お話をお聞きする中での多岐にわたる活動ぶりや、フットワークの軽さにはとても驚かされました。AJUアジア障害者支援プロジェクトでは、日本から使われていない車いすを集め、整備をしてアジア各国の障害のある人達へ車いすを手渡しで支援されています。「現地の人と接し、実際に車いすを使用してもらう中で一人一人の体に合った車いすが届けられれば」と、車いす生活を送られている近藤さんだからこその感覚で、当事者目線に立った細かな配慮ができるのだと感じました。国境を越えて支援物資を届けるには想像がつかないほどのご苦労だったかと思います。現地の貧困問題や外部の環境問題など実感されたことをたくさん教えていただき、私たちの生活の中で当たり前になっていることも、そうではない国があることを感じ胸が痛くなりました。日本で福祉の仕事をしていると「もっとこうだったらいいのに」と思うことも多いですが、発展途上国に比べると、日本の福祉がいかに充実したものか感じることもできました。近藤さんのように障がい当事者でしっかりとした声を上げる事ができる人はまだまだ少ないですが、サポートを仕事とする側の私達としても、当事者の方々の本音や気持ちを聞ける事はとても有難いことです。支援者と当事者、ここをまずノーボーダーにしたい。近藤さん、機会をいただきありがとうございました。(アペロスコーレ名古屋南店:中尾こずえ)